エストック

使用時代 14~17世紀の西ヨーロッパ等
英語表記 estoc
主な別称・表記揺れ タック(tuck)
ノッカー
パンツァーステッチャー(panzer stecher)
メイルブレイカー(mail breaker)
全長 80~130cm
重量 0.5~0.8kg

 針のような刀身を持つ、突き専用の剣。

 見た目や攻撃方法の似ているレイピアと同一視されることもあるが、実際には両者は、特徴も使われた時代も大きく異なる。
 まず、両刃剣であるため「斬る」ことも一応は可能なレイピアに対し、エストックは刀身全体が錐(キリ)のような形状をしており、完全に刺突のみに特化している。
 また、レイピアは銃器の台頭してきた近代において発展・普及した一方、エストックはそれよりも1~2世紀ほど昔の、プレートメイルが普及し出す直前頃に使われた。つまり、刺突剣としてはこちらの方が先輩ということになる。

 使い方も大きく異なり、レイピアは盾や短剣などと併用して片手で扱うが、エストックは両手で持ち、切っ先に全ての力を込めるようにして攻撃、という使い方がメインである。
 もとはチェインメイルやプレートメイルの隙間や繋ぎ目を狙うために開発された武器だが、その気になれば板金を突き通すほどの貫通力を発揮することもできた。別名の「パンツァーステッチャー」と「メイルブレイカー」は、どちらも「鎧通し」という意味であるが(前者はドイツ語、後者は英語)、それはこの特徴が由来である。
 ただ、後者については同名の短剣も存在し、そちらを指す場合もある。

 だが、あくまで「可能」なだけであって「向いている」というわけではないため、プレートメイルがより頑丈に発展・進化していく中でエストックは廃れ、やがて大型両手剣やメイスといった打撃力中心の武器が普及していくことになる。
 その後銃器の普及と、それによる鎧の軽装化に伴い復権するかと思われたが、この頃には既にレイピアが発展・流行しており、完全に取って代わられてしまった。
 戦場から消えた後も、闘牛士が使う剣「エストーケ」としては生き残り続けたが、こちらも動物愛護などの観点から闘牛という競技そのものが衰退、結果エストーケが日の目を見る機会も減少することとなった。

 なお、片手用のエストックも存在し、「クリシュマルド」などと呼ばれ区別される。

  • 最終更新:2014-08-15 18:01:56

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード